社団法人
畜産技術協会



低リジン濃度飼料の肥育豚への給与によるロース脂肪含量の増加
九州沖縄農業研究センター 豚飼養研究室 勝俣 昌也[H16/養豚/飼料・栄養]


はじめに
 長年、豚の肉質の研究は脂肪量を減らす方向で進められ、近年、枝肉の脂肪量は減少し、研究目的のかなりの部分が達成されている。一方、豚肉の「質」という観点から、筋肉中の脂肪含量が多い「霜降り豚肉」生産の機運も高まっている。すでに、育種改良された脂肪交雑のある豚の生産もみられる。育種改良以外の「霜降り豚肉」生産へのアプローチには、栄養制御による方法があげられる。栄養制御法の利点は、遺伝的能力を持たない豚でも、特徴ある豚肉生産が可能なことである。今回、栄養制御方法によって豚の筋肉内の脂肪含量を高めることを検討した。

内 容
 日本飼養標準・豚・1998年版は、肥育後期豚の(70−115kg)において、0.55%のリジン要求量を推奨している。リジン要求量の約70%の低リジン飼料(リジン濃度0.40%)を、約2ヵ月間給与した肥育後期の雌豚のロースの筋内脂肪含量は、リジン要求量を満たした飼料(リジン濃度0.68%)を給与した肥育後期の雌豚の約2倍であった。脂肪交雑の状態は肉眼で十分確認できるレベルであった。しかし、低リジン飼料給与豚は、リジン要求量を満たした飼料給与豚より、1日あたりの増体量が約100g低く、飼料効率も若干悪くなり、背脂肪も2mm厚かった。すなわち、ロースの筋内脂肪含量は飼養成績あるいは枝肉性状との間にトレードオフの関係があった。なお、給与した2種類の飼料の粗タンパク質の濃度はいずれも10.7%であり、リジン以外の必須アミノ酸濃度も同程度で、いずれも要求量を満していた。

今後の課題
 現状では、豚のロース内の脂肪含量と、飼養成績あるいは枝肉性状はトレードオフの関係にある。この点の改善には、低リジン飼料中のリジン濃度を筋内脂肪含量の増加効果がある範囲内で、できる限り要求量に近づけ、また給与期間をできるだけ短くすることが重要である。必須アミノ酸のリジンの低濃度飼料の給与により、豚からの窒素排泄量は増加すると予想され、この点の検討も必要である。
(*現所属:畜産草地研究所 中小家畜代謝研究室)


[問合先]
畜産草地研究所 中小家畜代謝研究室
masaya@affrc.go.jp


図 リジン含量が低い飼料を給与したときの、ロースの筋内脂肪含量
 
脂肪交雑が肉眼で認められる
写真 低リジン区のロース


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