公益社団法人
畜産技術協会


平成15年度畜産技術協力総合支援事業
東南アジアの天水農業生産地帯における
作物・家畜システムでの家畜生産の改善
平成16年3月 (社)畜産技術協会 A4判 62頁


 
概 要
この資料は、エチオピアに本部を置く国際畜産研究所(ILRI)が東南アジア9ヵ国を対象として、日本を含む4名の研究者による現地調査をもとにした報告書(Improvement of Livestock Production in Crop-Animal Systems in Rainfed Agro-Eclological Zones of South-East Asia)の翻訳(抜粋)である。
 この地域の農業はこれまで穀物、とくに米の生産が重視され、集約的な農法の推進と灌漑農業に重点が向けられてきたが、今後の食料生産を高めるためには比較的関心が低かった天水農業生産地帯に力を注ぐ必要が指摘されている。天水農業、つまり主として降雨に依存する農業地域(非灌漑農業で、降雨期に冠水する低地と冠水しない高地に2大別される)は東南アジアに広く分布しており、全耕地面積に対するその割合は中国で54%、メコン河流域国で88%と大きく異なるが、地域の農家の多くは小規模で複合経営の資源に乏しい。またこの地域では、穀作には適しているものの利用されていない土地面積が8,100万haと計算され、畜産利用の潜在的可能性が指摘されている。
 本調査報告は、このような東南アジア地域における農業生態学地帯の特徴と重要性を解説した後、これらの地域で多数に飼育されている反芻および非反芻家畜に着目した作物と家畜の連携(複合)システムの現状と問題点を分析し、各種のシステムにおける家畜生産の重要性を評価するとともに、その持続的発展に向けての戦略等を提起している。
 この地域の天水農業ではさまざまな生産システムが存在し、米を基礎としたシステムのほか、キャッサバ、トウモロコシ、多年生樹木作物、養魚等とも関係する。作物と家畜を組み合わせた地域の生産システムには、粗放な放牧システム、作物と草地の複合、永年樹木との複合などの各システムが存在するが、また反芻動物、非反芻動物、魚等の組み合せもみられる。報告書では作物と家畜の複合による相互作用の事例が数多く紹介され、さらに作物と家畜の複合の利点を分析するとともに、小規模農家の作物―家畜システムの経済的利益を例示するなど、フィールド評価を行っている。結論として、今後の持続的発展にあたっては、飼料資源と反芻家畜の栄養、動物遺伝資源、家畜衛生と疾病、社会経済学と政策の4分野を重点課題としてあげ、それぞれの研究課題と研究戦略に論及している。
 今後、この地域に対する農業および畜産の持続的発展に向けてのわが国の畜産協力の展開にあたっては、本報告書であつかった作物・家畜システムの現況、重要性、その課題と発展方向についての理解と認識が重要であり、巻末にあげられた多数の関係文献リストとともに、極めて有益な技術参考となるだろう。
 
構 成
 1.東南アジアにおける農業生態地帯の特徴と重要性
 2.農業システムの特徴と研究の概観
 3.作物―家畜生産システムのフィールド評価
 4.作物―家畜システムにおける重要な研究課題
 5.研究戦略
 6.結論と提言


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