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途上国における酪農は、経済発展に伴う牛乳・乳製品の需要の増加とともに重要となっているが、乳質は概して劣悪で、酪農家に対しては消費者に好まれる安全で良質の牛乳・乳製品を提供するために、その原料である牛乳の品質改善が求められている。このマニュアルは、開発途上国でこの分野の技術協力に従事する専門家の技術移転用教材ないしは技術普及書として作成されたもので、酪農家は乳質改善についての基礎知識を十分に認識し、正しい理解のもとに乳質改善を進めていくことが期待されている。
乳質には二つの意味があり、細菌数や乳房炎、農薬や抗生物質の残留などを扱う衛生的な乳質と、生乳の一般組成と各成分の性状などを扱う理化学的な乳質がある。本書では、まず乳質改善の基本的な条件を述べ、乳質改善指導体制の整備について述べている。次に乳質改善の理論として、正常乳の理化学的性質について説明し、アルコール不安定乳、低成分乳などの原因と対策を述べ、衛生的乳質については生乳中の微生物、体細胞、抗生物質などについて、その内容と対策を説明する。
乳質改善の実際として、(1)搾乳、貯乳時の衛生管理、(2)集乳および受乳時の検査と衛生管理について、正しい搾乳の手順や牛乳の冷却、貯蔵の方法などを詳細に説明する。さらに(3)生乳検査の実際として、官能検査から一般物理化学性の検査、乳成分の検査法、微生物的検査法などについて、検査の項目と実際の手順などが実用的に解説されている。
本書の全体を流れる思想として、乳質改善の技術は極めて広範な技術であって、酪農技術の全般にわたるものであり、酪農の生産性を高める技術と同様であるという。健康で能力の高い乳牛に良質の飼料を正しく給与することで良質の泌乳が期待できる。その乳を衛生的に搾乳、保管、輸送することが乳質保全管理技術であるという。執筆にあたった市川忠雄、大浦義教、中野 覚、野附 巌の各氏の現場重視の姿勢が伺われるだろう。 |
1.乳質改善の意義と方法
2.乳質改善の理論
1)物理化学的乳質とその改善
2)衛生的乳質とその改善
3.乳質改善の実際
1)搾乳・貯乳時の衛生管理
2)集乳および受乳の検査と衛生管理
3)生乳検査の実際 |
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