公益社団法人
畜産技術協会


平成16年度畜産技術協力総合支援事業
乳牛の搾乳衛生 (DVD)
平成17年3月(社)畜産技術協会


概 要
 乳房炎は乳牛の多発疾病であり、乳量減少や異常乳のほか、臨床型のものはしばしば廃用の原因となり、酪農経営上で大きな経済的被害をもたらす疾病である。開発途上国においても乳房炎の多発が酪農振興の大きな阻害要因になっており、酪農関係の協力事業においても乳房炎コントロールが重要な課題となっている。この度、(社)畜産技術協会は乳房炎対策の技術移転を徹底させる方策として、農民にも理解頂けるように現場に即した、本病の発生原因から予防対策にいたるまでを、平易な解説内容により英語・スペイン語版DVDにとりまとめたものである。
 生産獣医療システムとは、獣医師が畜産農家の生産性向上のために疾病の予防を始めとして、栄養管理、育成管理、繁殖管理、生産性や収益面など多方面にわたって指導を行うものである。このDVDでは、生産獣医療システムの一環として生産現場における乳房炎コントロールを中心に、その取り組み状況を分かり易く紹介した内容である。農民ばかりでなく、畜産技術協力に従事する専門家及び相手国カウンターパート技術者にとっても有用な技術情報である。
 
構 成
このDVDは、酪農場と家畜診療所における日常の業務を通じて、農家の人と臨床獣医師の対話を交えながら、以下の事項を中心に構成されている。

1.乳房炎の主な原因菌と搾乳衛生
 乳房炎は、牛の乳房内に細菌などの微生物が侵入・増殖して起こる病気である。主な細菌は黄色ブドウ球菌、レンサ球菌、大腸菌などであり、とくに黄色ブドウ球菌は感染牛の乳汁に汚染したミルカー、搾乳者の手などを介して搾乳時に他の牛に感染するが、それ以外の細菌は周囲の環境に常在しており、不適切な搾乳などにより感染することが多い。
 搾乳の基本は、乳頭刺激(前搾り)・プレディッピング後約1分でミルカーを装着し、5〜6分で搾り終わることである。また、乳頭管を損傷し感染の機会を増やす過搾乳に注意し、搾乳終了後は直ちに乳頭部の80%以上を確実にポストディッピングを行う。乳房炎コントロールでは、こうした作業が正しく行われているか定期的にチエックすることが重要である。

2.バルク乳培養検査の重要性
 バルク乳の定期的な培養検査により,乳汁中にどのような細菌が混入しているかを知ることは乳房炎コントロールを行う上で重要である。黄色ブドウ球菌が多く検出される農場は要注意である。黄色ブドウ球菌は、乳房炎の原因菌の中で難治性の乳房炎を引き起こすことが多く、感染牛が発見されれば直ちに治療を行い、感染の拡大を防ぐ必要がある。また、バルク乳の大腸菌汚染は搾乳機器の管理が不適切な場合に起こり易く、大腸菌は乳頭管や乳頭皮膚の損傷部から感染することが多いことが知られている。レギュレーター、パルセーター、ライナーなどは衛生的に取り扱い、定期的な保守点検を実施し、常に搾乳システムが正常であることを確認する必要がある。

3.生産獣医システム
 生産獣医療システムにおける乳房炎コントロールは、牛群に対して搾乳の手順,ディッピングによる乳房の感染防御、バルク乳培養検査、ボディ・コンディションスコアなどを参考にして乳量 のアップ、乳質の改善のための給与飼料、さらに牛舎環境の改善を図るなど、発病するまで待って治療するのでなく、発病させないような対策を飼育者に指示するというシステムであることを平易に解説している。


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