公益社団法人
畜産技術協会


平成13年度畜産をめぐる国際問題研究推進事業
WTOセーフガード協定の解釈について
平成14年3月 (社)国際農業交流・食糧支援基金 A4判 72頁


 
概 要
 WTOの下では、WTOセーフガード協定により規律される「一般セーフガード」、WTO農業協定第5条により規律される「特別セーフガード」、WTO繊維協定第6条により規律される「繊維セーフガード」などがある。本報告書は「一般セーフガード」に焦点を当て、主として上級委員会の報告書の内容を検討することにより、一般セーフガードに関連する用語や概念について判例分析を試みたものである。

 GATT第19条(特定の産品の輸入に対する緊急措置)は、一般にWTO加盟国が輸入の急増に伴う国内産業への損害を防止するための臨時的な緊急措置(セーフガード措置)として、条約上の義務を停止し輸入制限を行うことを容認するものである。WTOセーフガード協定はウルグアイラウンド交渉を経て成立したものであり、GATT第19条の規律を明確化・強化・補完するものであると理解されている。しかし、GATT第19条とWTOセーフガード協定とは表面上の規定内容、文言などが矛盾・対立するわけではないが、表現等が異なる場合には運用上でWTOセーフガード協定の規定内容を優先して適用すべきか、それともGATT第19条の規定を優先すべきかということが問題となり得る。実際にいくつかのセーフガード措置に関する紛争案件の中で、こうしたことが争点の一つとして取り上げられた経緯がある。
 GATT第19条とWTOセーフガード協定の表面上の規定内容が異なる場合の扱いとして、アルゼンチンによる履物に対するセーフガード措置、韓国の脱脂粉乳・調整品の輸入に対するセーフガード措置、米国の生鮮・冷蔵・冷凍小羊肉の輸入に対するセーフガード措置などに関するWTO上級委員会の報告書から解釈できることは、GATT第19条とWTOセーフガード協定の双方はともにWTO協定の一部となっており、同様・同等に有効であって、締結国がセーフガード措置をとる場合には、GATT第19条の規定内容及びセーフガード協定の規定内容の双方に適合する手続き及び条件等にしたがってセーフガード措置をとることが義務付けられているとの解釈が確立されているものと解釈できる。

 さらに、本報告書は一般セーフガードに関連する用語や概念である「予見されなかった発展」、「同種または直接に競合する産品」、「重大な損害」、「同じ関税同盟等に属する国をセーフガード措置の対象外とすること」、「因果関係、輸入の増加以外の要因による損害の責めを輸入に帰さないことの検証」、「遅延すれば回復し難い損害を与えるような危機的な事態、特定措置の禁止及び撤廃」、「調査報告書に含むべき事項と秘密情報の取扱い」、「国内産業の状態に関する全ての要因の検証方法」、「損害を防止し又は救済し、かつ調整を容易にするために必要な限度内の措置内容」などについての定義ないし解釈を試みている。
 
構 成
 1.CATT第19条とWTOセーフガード協定の関係(CATT第19条とWTOセーフガード協定の表面上の規定内容が異なる場合の扱い、現行の確立された解釈など)
 2.セーフガード措置に関する主要概念・用語の定義・解釈(WTO上級委員会報告書で示された解釈の基準、用語の定義ないし解釈など)
 3.WTO発足後のセーフガード措置に関する紛争


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