2005年8月20日〜24日に麻布大学で開催された第39回国際応用動物行動学会議のプローデイング(英文、181頁)である。本会議には世界25ヵ国より約200名の参加があり、基調講演、プレナリー講演と75題の口頭発表、49題のポスター発表とワークショップや「市民との対話」講座が行われた。
当会議の主催母体は1966年に「集約畜産における行動的問題」に対処するため設立された獣医行動学会(Society for Veterinary Ethology:SVE)で、研究対象が家畜から「人と関わるあらゆる動物」へ拡大し、更に研究内容と研究者の外延的拡大に伴い、1990年に団体名を国際応用動物行動学会(International Society for Applied Etholo:ISAE)と変更し、今日に至っている。当学会は、人による動物利用に関係した動物行動の基礎的・実用的研究結果を持ち寄り、研究者間の意見交換と討論を推進すべく国際会議を毎年開催している。産業動物の飼育環境整備問題(家畜福祉研究、集約畜産の代替法研究)や行動制御問題、展示動物や実験動物の動物福祉問題、野生動物管理問題並びに家庭動物の問題行動の制御問題や福祉問題等が本会議の主たるテーマとなっている。今回の会議が日本で開催されたことによりアジアでの応用動物行動学展開の契機となる可能性が高いと考えられる。 |
メインテーマ |
ヒトと動物の共生 |
サブテーマ |
1.家畜福祉と家畜生産性・家畜健康性との関係
2.ヒューマンーアニマル・ボンド
3.ヒトの野生動物との生活上の関わりからくる諸問題と解決法
4.飼育環境エンリッチメント
5.その他 |
基調講演 |
「動物における認知と動物福祉」渡辺茂博士(慶応義塾大学教授) |
プレナリー講演 |
「自然性と動物福祉に基づいた“環境エンリッチメント”」、
「ドーパミンとの関連:動物の常同行動はヒトの嗜癖のモデルになるか?」、「生体展示におけるベンガルタイガーとキーパーとの相互関係」。
「高泌乳牛の横臥要求」、「家畜におけると場までの最大許容異動時間」 |
社会からの動物行動学に対する以下のような要請が急激に高まってきており、本会議はこのような社会からの強い要請に対応した時期を得た会議となっている。
第1は「動物福祉」への対応で、国際的な病気の蔓延を防止するために設けられた国際機関のOIEでは2005年5月の総会で「アニマルウエルフエア国際ガイドライン」を採択した。 また国内的には、動物愛護管理法が2005年6月に改正され、家庭動物、展示動物、実験動物の愛護と管理の方向が定まり、動物福祉の科学といる応用動物行動学が期待されている。
第2には「野生動物と人間の軋轢」への対応で、ツキノワグマが里地や町におりてきて、人間との軋轢が話題となっている。その他にもサル・シカ・イノシシ・カモシカ・カラスと色々な野生動物との軋轢がおこっている。この解決にも、応用動物行動学が期待されている。
第3には、「ペットと人間との軋轢」への対応で、「ペットからの飼い主への攻撃」や「ペットの家庭内での排泄行動」など、その成業も動物行動学者に求められている。 |
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