公益社団法人
畜産技術協会


平成17年度畜産をめぐる国際問題研究推進事業(WTO農業交渉具体的問題等対応事業)
ヨーロッパの直接支払い制度の改革−証券化をめざしてー
平成18年3月(社)畜産技術協会


概 要
 本資料は、英国のReading大学教授とRichard Tranterの二人が編輯した原書“A Bond for Common Agricultural Policy Reform”を翻訳したものである。
 1960年代以降、歴代の農業経済学者は農業政策の改革を円滑に進めるためにデカップルされた補償支払いを用いることを提唱してきた。第1章では、デカップルされた支払の三つの政策目的とボンド・スキームの関係を論述している。
 第2章では、EUにおける直接支払いの重要性とWTOにおけるその取り扱いを説明している。ボンド・スキームは、CAPに基づく現行の直接支払い、特に、マクシャーリー改革と呼ばれている1992年のCAP改革によって導入された耕地の面積支払いに適用になり、また、2003年のフィッシュラー改革はボンド・スキーム移行に着手したが、完成までには至らなかった。
 第3章ではEUの農業改革のための補償提案(ボンド・スキーム)の諸問題を検討しており、第4章においてはボンド・スキームの構成要素をもう一度明確にする作業を行い、CAP改革の一環としてのボンド・スキームの実行可能性と受け入れ可能性を探求している。
 第5章では、ボンド・スキームが現行のCAPをBuckwellその他(1997)が提唱したヨーロッパのための共通農業・農村政策(CARPE)と類似の政策に転換するのをいかに促進するかを詳しく説明している。
 第6章では、1991年のデンマークの提案したボンド・スキーム案を記述し、なぜこの提案が採用されなかったかという要因について分析している。第7章では、ボンド・スキームをどのように実施することができるかを詳しく説明している。
 第8章では、英国、ドイツ及びポルトガルにおいて実施した農民に対する郵便調査及び農民インタビューにより提案されたボンド・スキームに対する農民の反応を分析して、農業構造、農村雇用、生産量及び土地利用に及ぼす影響を検討している。
 第9章及び第10章では、CAPに引き続きかかっている圧力を検討し、直接支払いを完全にデカップリング化することに対しては政治的反対が相当大きいが、ボンド・スキームは将来のCAP改革において有用かつ実際的な役割を果たすことができると結論づけている。
 
構 成
まえがき
訳者解題
序論
第1章   デカップルされた支払いと三つの政策の目的:補償、農家所得の支持および多面的機能
第2章 EUにおける直接支払いとそのWTOにおける取り扱い
第3章 EUの農業政策改革のための補償提案
第4章 CAPの改革を円滑化するためのボンド・スキーム
第5章 CAPからCARPへ:包括的な改革にボンド・スキームを組み込むこと
第6章 なぜボンド・スキームは1992年に採用されなかったのか
第7章 ボンド・スキームの実施
第8章 提案されたボンド・スキームに対する農民の反応調査
第9章 直接支払いの役割は?:ドーハランド、EU拡大及びCAP改革の展望
第10章   結びのコメント


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