米国の食品生産者は供給網の経路に沿って、食品の流れを追跡できるトレーサビリティの方法を開発してきた。本報告は米国農務省経済研究局農業経済報告No.830を翻訳したもので、生鮮農作物、穀物/油糧種子及び牛/牛肉の取り組み状況を調査・分析した内容である。
生鮮農作物に関する情報としては、梱包の箱ないしパレットに貼り付けられるラベル及び取引の書類上あるいは電子的記録がある。箱の情報と書類上あるいは電子的記録パレットのタッグ番号及びロット番号と書面・電子的記録を結合させることにより、販売網の異なった段階の間を追跡できるようにした。しかし、バーコードの標準化システム等についてさらなる開発を必要としている。
一般に収穫された穀物/油糧種子はカントリー・エレベーター会社に販売され混合・プールされる。この場合、エレベーター会社は販売農家の所在地、品質(乾燥度、品質、害虫混入など)を記録しており、穀物/油糧種子の市場が効率よく機能する限り、加工業者は品質と安全性を監視するエレベーター会社にまで生産品を追跡するシステムを有している。しかし、非遺伝子組換えや有機栽培等の特殊な作物による製品の需要が増えるにつれて、より正確なトレーサビリティの開発が加工・消費段階から要求されるようになっている。このため、エレベーター会社はあらかじめ決められた運搬量や時期について、非遺伝子組換えや有機栽培等の特殊な作物を栽培する農家と契約しており、契約書には農家が製品を追跡することを含む生産や取り扱いの実務に従うように明記されている。エレベーター会社と買い手の間でも契約書を作成し、商品を追跡する場合の証拠書類としている。
牛の個体識別は疾病・飼養管理の面で有用であることから、以前から広く普及してきた。牛肉はISO9000のガイドラインに従い、ほとんどの追跡はバッチあるいはロット単位で入力し、その後、それが変形されるにつれて新しいバッチあるいはロットに番号を付けるようにしている。病原大腸菌(O157)やサルモネラのような食肉媒介性中毒を監視するために、多くの加工業者は正確なサンプルの抽出法、検査方法及び追跡に関する取り決めを確立している。 |
米国における食品安全革新−理論と食肉産業の事例−
1. |
序論と研究方法 |
2. |
効率の良いトレーサビリティーの方式は変化する |
3. |
業界の研究:民間部門のトレーサビリティーの方式は費用と便益のバランスを
とる |
4. |
トレーサビリティーの供給の場での市場の失敗:業界と政府の反応 |
5. |
結論 |
付録:米国のトレーサビリティーを要請する主な事件
参考文献 |
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