(社)畜産技術協会は、「WTO農業交渉具体的問題等対応事業」を実施している。本事業では海外からの要人招聘、シンポジウムの国内・国外開催、関連情報の収集・分析を実施しており、その一環として“全国畜産縦断いきいきネットワーク”との共催により、「分かりやすいWTO農業交渉シンポジウム」を平成18年3月東京で開催した。本報告は、シンポジウムで塩飽二郎氏(日本食肉生産技術開発センター)による「WTO農業交渉のゆくえ」及び加倉井 弘氏(経済評論家)による「がんばれ日本の畜産経営−国際競争力の強化−」と題して講演した内容をまとめたものである。
「WTO農業交渉のゆくえ」:WTOはGATTウルグアイラウンドの合意文書に署名した120カ国以上の合意により、1995年1月、参加国は合意協定を守っているか監視する役割を持つほか、世界の貿易を自由化するための枠組みの構築を進める国際貿易の中核機関して発足した。WTO発足によって、農業、繊維貿易に関する協定やサービス貿易や知的所有権に関する協定が新たに作成されたほか、紛争解決手続きを統一し、手続きが迅速、円滑に進むようになった。2000年以降に予定されている新たな多国間交渉(新ラウンド)の進め方が決まることになっているが、日本とEUが包括的交渉を主張しようとしているのに対して、アメリカは分野別交渉を優先させ、短期間で成果を上げるべきだという姿勢を表明している。また、交渉分野についても、アメリカが農業、音響映像、自由職業分野、知的所有権や環境、労働条件と貿易に関連する問題を重視するのに対して、EUは鉱工業製品関税のほかに、検疫、基準認証、政府調達、電子商取引などに間するルール作りを重視するなど、足並みは必ずしもそろっていない。農業交渉における日本の主張は、自由化の抑止と国内の農業保護策への理解、関税引き下げ反対、最低輸入義務量削減、セーフガード存続、助成金政策維持、助成金削減免除政策の要件緩和、生産調整を要件にした助成金政策の存続、輸出補助金削減などである。
「がんばれ日本の畜産経営−国際競争力の強化−」:WTO貿易体制の下で、日本の畜産をどう発展させいくかについての私見を述べている。価格支持から所得支持への政策転換を図るほか、法人化による経営革新の実現が重要であることを指摘した上で、国際競争力をどう強化していくかを考えるべきであるとした。具体的には、技術革新による低コスト生産・高品質化、安全安心やブランド化による輸入品との差別化などが必要であると述べている。 |
講演1.「WTO農業交渉のゆくえ」
講演2.「がんばれ日本の畜産経営−国際競争力の強化−」
付属資料 |
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