公益社団法人
畜産技術協会


平成9年度畜産技術協力推進事業報告書
タイ畜産環境現地調査報告書
平成10年3月 (社)畜産技術協会 A4版92頁


 
概 要
 東南アジアを始めとする途上国の畜産は、経済成長とともに急速に進展しつつあり、多頭羽飼育に伴う畜産環境問題が顕在化しつつある。この調査は、畜産環境問題の現況を把握し、問題点の摘出と改善策の検討、関連資料の収集などを行って、今後のこの分野の技術協力の可能性と方向を検討しようとするもので、平成9年12月、畜産発展の著しいタイ国を対象に現地調査(総括:緒方宗雄氏・畜産技術協会)を行った。
 タイ国の気候は1年中高温であるため、家畜糞尿は乾燥しやすく(とくに乾期)、一般的には公害の原因となりにくいようだが、東北部と北部の11月から4月の間は、悪臭などの公害が起こりやすいように思われる。国土の40%を占める農用地は家畜の糞尿を施用するには十分の余裕を持っているが、一部の地域の家畜飼養頭数は施用限度量に近いものとなっている。畜産農家をみたが、汚物感や悪臭は少なく、環境問題は特に起こっていないが、大型の家畜飼養施設では国によるバイオガス施設の設置補助や固液分離、堆肥処理、圃場散布などの処理が行われている。一部の地域で水田に豚尿が流出して被害をもたらした例が報告されている。また大型養豚場の周辺では悪臭と汚水の流出が報告されている。
 畜産当局は、畜産環境問題を意識し、畜産環境担当官の設置や環境調査、ガイドライン策定などを進めているが、環境測定などの基礎技術の習得と現在の環境状態の把握が重要であろう。報告書はこれらをもとに環境基準や指針の策定をすすめると同時に、この国の自然条件にそくした環境の保全のために、家畜糞尿の燃料化、肥料化などの省力化、効率化のための技術開発をすすめ、現地適応型の畜産システムの構築を提言している。一方、我が国は、畜産公害関連では豊富な経験と技術蓄積を持っており、研究協力を含めて技術協力の必要性と適性が極めて高いと考えられる。
 
構 成
1.タイ国の畜産と畜産環境の現状
2.実地調査からみた畜産環境―酪農、養豚、養鶏、水質測定
3.畜産振興計画と畜産環境
4.畜産環境改善への取組み、畜産環境の課題


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