公益社団法人
畜産技術協会


平成10年度国際防疫及び畜産技術協力推進事業報告書
マレーシア畜産環境現地調査報告書
平成11年3月 (社)畜産技術協会 A4版92頁


 
概 要
東南アジアを始めとする途上国の畜産は、経済成長とともに急速に進展しつつあり、多頭羽飼育に伴う畜産環境問題が顕在化しつつある。この調査は、畜産環境問題の現況を把握し、問題点の摘出と改善策の検討、関連資料の収集などを行って、この分野の技術協力の可能性と方向を検討しようとするもので、平成10年9月、畜産発展の著しいマレーシア国の半島部(西マレーシア)を対象に現地調査(総括:緒方宗雄氏・畜産技術協会)を行った。
 マレーシアの畜産は豚とニワトリを主体とし、シンガポールという大消費地をひかえて企業的な畜産経営が伸びているが、飼養規模はますます拡大の傾向にあり、畜産環境を保全しつつ、経営基盤の弱い中小規模経営を含めて養豚業をいかに維持・発展させるかが課題となっている。現地調査では、2,000頭から18,000頭に及ぶ企業養豚場4ヵ所、13万から52万羽に及ぶ養鶏場4ヵ所を含めて乳牛、肉牛、山羊農場など、合計12農場を実地に調査し、それぞれの飼養状況と糞尿処理状況、水質と臭気の検査値などが紹介されている。
 養鶏では、一部に醗酵処理もあったが、多くは無処理で乾燥後に肥料として売却するのが通例で、日本製の鶏糞乾燥機や醗酵飼料製造機も見られた。豚では豚舎の水洗、(固液分離、一部のところ)、処理池での浄化が一般的で、水質汚濁は軽度であった。畜産環境の規制は農業省獣医局にまかされ(環境問題の所管は科学技術環境省)、全国4ヵ所の獣医ラボに併設された公害検査室で主に水質を中心に検査しているが、技術者の充実と機材の整備が必要とされている。当局の関心はかなり高く、規制の強化、家畜糞尿処理施設の展示や支援などを行っている。畜産環境問題は水質汚濁から臭気問題へと拡大しつつあり、とくに臭気の測定技術と基準策定に関して、当局の関心が寄せられた。
 これらの調査結果をもとに、マレーシアにおける畜産環境の問題を総括し、土地と社会条件をもとにした糞尿の処理と利用、とくに固液分離、処理池の効用を考察し、処理にかかる経済分析、土地還元について考察した。
 
構 成
1.マレーシアの畜産と畜産環境
2.畜産環境に対する環境規制
3.実地調査からみた畜産環境
4.畜産環境の問題点
5.畜産環境の改善方向と技術協力
付:参考図表と統計表


PAGE TOP

(C) Japan Livestock Technology Association 2005. All Rights Reserved. CLOSE