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途上国の畜産は経済成長とともに急速に進展しつつあり、多頭羽飼育に伴う畜産環問題が顕在化しつつある。この調査は、畜産環境の現況を把握し、問題点の摘出と改善策の検討、関連資料の収集などを行って、この分野の技術協力の可能性と方向を検討しようとするもので、平成11年11月、フィジーおよびサモアを対象に現地調査(総括:緒方宗雄氏・畜産技術協会)を行った。これらの地域は、牛、豚などの家畜の飼養の歴史は古く、家畜密度は高く、地勢的な条件も加わって公害問題を惹起しやすい地域と想定されている。
サモアは国土面積も人口も限られており、畜産の規模は大きくはないが、人口比でみると豚の頭数は極めて多く、社会習慣、食文化のうえで重要なものとなっている。牛はココナツ農園の下草を利用した放牧や山間地の牧場で飼育され、糞尿は自然に土地に還元する。豚は農家の庭先での放し飼いが一般的で、ここでは畜産環境問題はほとんど起こらないだろう。一方、企業的な養豚や養鶏では一部に悪臭や地下水の汚染が見られるが、必要な規制はまだ存在しない。しかし、近年、南太平洋の自然を守るという見地から畜産を含めた環境問題に社会的な関心の高まりが見られつつあり、畜産分野でも技術者の養成訓練と現地事情に適した家畜糞尿の処理技術と環境検査体制の検討が必要となるだろう。
フィジーはサトウキビ、コプラの生産を主体とする農業国だが、コメ、酪農、鶏肉生産がそれらに次いで重要な作目となっている。放牧形態の牛飼育では環境問題は少ないが、乳牛では搾乳場などに牛が集合するので、糞尿や汚水の未処理放流による水質汚染が起こる。庭先養豚では悪臭とハエの発生が見られるが、ほとんどの農家に飼育されているのであい身互いの状況だろう。多くの企業養豚場は川筋に設置され、豊富な水で糞尿ともに洗い流してそのまま放流するので、川の汚染が起こり、海の汚染に直結する。早急に、何らの規制と措置が必要だろう。訪問した各畜種の8農場では、臭気はいずれも軽度であったが、水質の汚染は6/8農場に認められた。当局ではバイオガスの発生装置の設置補助を開始するなど、畜産環境問題への関心が高まっている。 |
1.サモア国の調査概要
2.フィジー国の調査概要
3.畜産環境改善のための協力方向
4.参考統計の諸表
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