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畜産分野の技術協力の要請が拡大し多様化するなかで、開発途上国の多くで牛乳および乳製品の需要の増大がみられるところから、今後、国内の生産振興のための牛乳の処理加工、乳製品の品質向上や流通部門など等についての協力要請が高まるものと見込まれている。このような見地から、途上国の牛乳乳製品の生産から加工、流通に至る実情を調査検討して、これからの協力事業の発展に資するべく、平成12年1月、ネパールを対象に現地調査(総括:藤田陽偉氏・畜産技術協会)が行われた。本報告書はその成果品である。
ネパール農業開発は貧困問題の軽減に焦点をあてながら、市場経済として成り立つよう発展させるため、畜産や園芸に力を入れている。牛乳の生産と消費は年々伸びており、不足量として約10%相当量が輸入されているが、時期的には生産がだぶついて処理施設が生乳の受入を拒否するといった事態も生じている。乳用の水牛が多数飼育されていることも特徴的である。本報告では、これら需給問題のほか、集乳の組織、乳価、加工販売の実情などについても述べ、ネパール酪農の中心的な役割をもつ酪農開発公社の活動を紹介している。調査したいくつかの牛乳加工施設、処理施設、検査施設などについて、事業内容の記載とともにコメントが付されている。国際機関および先進国による畜産関係の協力事業も紹介されている。
これらを総括すると、@安定的な需給のバランスを確保するための諸施策の導入、A牛乳乳製品の栄養、品質に関する消費者教育、B飲用乳と乳製品の品質管理と製造にかかる技術の開発と改善、C乳業関係技術者の養成と訓練が、これからの課題として指摘されている。またBとCは、我が国の技術協力のテーマとしても適切であろうとしている。
巻末には、本調査団の派遣の機会に開催された乳業にかかるワークショップの議事録とともに、同会議で現地側技術者から報告されたTechnical paperが収載されており、ネパール乳業の理解に有用であろう。 |
1.ネパールの畜産の概況
2.牛乳・乳製品の需給と流通、その問題点
3.生乳の取引と検査
4.牛乳・乳製品の加工産業と加工技術
5.技術協力の必要性と可能性
6.ワークショップの報告
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