公益社団法人
畜産技術協会


平成13年度国際防疫及び技術協力推進事業報告書
ブータン畜産事情調査報告書
平成14年2月 (社)畜産技術協会 A4判129頁


 
概 要
畜産分野における技術協力の円滑な発展を図るには、畜産協力の有力な対象国について畜産事情を把握分析しておく必要がある。このような趣旨で、これまで畜産情報が乏しかったブータン王国を対象に、農林水産省の委託事業として、2001年9月、3名からなる調査団(団長:稲継新太郎、畜産技術協会)が現地調査を実施し、畜産関連資料の収集分析を行ない、本報告書が作成された。
 ブータンは、ヒマラヤの東端に近い山岳国で、国土の45%は海抜3,000メートル以上、森林が73%を占める厳しい地理的条件にある。国土面積は4.6万平方キロ(九州の1.3倍)、総人口64万人(資料によっては、76〜143万人)という小国だが、国民の80%が農民で、農家の90%が牛を飼うという地域自給型で労働集約型の小規模農家経営の農業国である。
 牛の総数は約30万頭だが、在来牛は減少の傾向にあり、改良種が増えつつある。ミトン、シリ、Thrabumと呼ばれる在来種が存在する。また、山岳高地特有のヤクが3〜4万頭、飼育されている。豚は不時の出費のための蓄えとして飼われ、6万頭程度だが、在来種の比率が高い。鶏は自家用消費を目的に飼われ、農村婦人の現金収入源となっている。畜産物の消費は伝統的な牛乳とチーズの消費を除いて少ない。政府の施策として、牛の人工授精、豚の種畜の配付などの家畜改良、牧草種子の生産配付のほか、家畜衛生問題では、牛疫が撲滅されて口蹄疫の清浄化が現在の目標とされ、出血性敗血症、気腫疽、炭疽、各種寄生虫病なども課題とされている。獣医疫学センターと呼ばれる診断施設があり、ワクチン製造は需要規模の問題もあって、現在は機能していない。
 畜産発展の阻害要因として当局があげている事項を紹介するとともに、調査を通じて重要と思われる畜産技術として、(1)生産性の向上のための交雑利用技術、(2)草地造成を含めた飼料生産技術をあげている。また、物流インフラの整備、地域総合農村開発、技術普及、環境衛生、家畜遺伝資源、家畜衛生、畜産物加工などについても提起している。巻末にあげた天然資源研究センター年報(1999−2000)は、畜産分野の研究成果を掲載してある。巻頭には4ページにわたり写真が掲載され、現地畜産事情の理解を助けるものとなっている。
 
構 成
 1.ブータンの概要
 2.農業の概況
 3.畜産の概況(畜産施策、家畜飼養状況、畜産物の生産・加工、飼料生産、家畜改良、家畜衛生、技術普及と教育・研究など)
 4.畜産振興の課題と技術協力
 参考:天然資源研究センター年次報告書


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