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畜産分野の技術協力の要請が拡大し多様化するなかで、開発途上国の多くで牛乳および乳製品の需要の増大がみられるところから、今後、国内生産の振興のための牛乳の処理加工、乳製品の品質向上や流通部門についての協力要請が高まるものと見込まれる。このような見地から、途上国の酪農や乳業事情および加工・流通事情を調査して、技術協力の可能性を検討するために、2001年11〜12月にかけて、4名の乳業関係者(総括:川村良平、日本ホルスタイン協会)によるマレーシア(半島部)の現地調査を行なった。
牛乳・乳製品の需要は生乳換算で122万トン(2000年)とみられ、加糖練乳(37%)、飲用牛乳(16%)が主体となっているが、その90%以上は輸入で、飲用を主体とする国内生産は全体の3〜4%にすぎない。経済成長とともに消費需要は年々伸びており、自給率10%を目指して、国も酪農振興に力を入れているものの、マレーシアの酪農は畜産の中ではマイナーな存在である。乳用牛の主体は、ホルスタインなどの外国種との交雑種で、生産性は年々高まっているが、泌乳量は7〜20リットル/日と少量で、飼養規模は小さく、粗飼料生産の制約、高価な濃厚飼料、良質の育成雌牛の不足が課題としてあげられている。
乳業の中心は加糖練乳の生産であるが、外資系大手5社で乳製品市場の75%を占めると推定される。生乳の取引から乳製品加工の実態まで現地調査が行なわれ、それぞれにおける事業活動内容を含めて詳細な記載がなされている。政府が関与するMMC (Milk Collecting Center)が国内での集乳を一手に引き受け、乳業会社に販売するほか、生乳検査、技術指導、AI業務、その他の必要な農家サービスを担当する。乳業会社はこれらの原乳を引き受けるほか、輸入の原料をもとに各種の乳製品を製造するということになる。原則として、関税措置もなく自由貿易体制である。
調査の結論として、企業的な乳業が展開されているマレーシアでは加工処理・流通分野の技術協力は考えにくく、一方、生産分野においては飼料の生産と確保、集乳・貯乳処理などの衛生分野の改善指導などに関連して、技術協力の余地が大きいと判断された。巻末にはマレーシアの農業政策、畜産関係法令、関係機関の概要など(現地資料)が収録されている。 |
1.調査の要約と所感
2.酪農の概況と動向
3.牛乳・乳製品の需給
4.生乳取引と加工の実態、および問題点
5.生乳の検査体制
6.他国の援助状況
資料:農業政策、関係法令、畜産研究開発の概要、その他
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