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途上国の環境と調和した効率的で持続的な畜産発展を図るには、粗飼料の確保や未利用資源の活用などの飼料基盤の強化にかかわる技術協力が重要となっている。このような視点から、インドネシアの畜産、特に酪農における自給飼料事情に関する基礎資料の収集を目的に、2001年11月、安武 正秀(日本草地畜産種子協会)ほか3名からなる調査団が派遣された。インドネシアは畜産分野での技術協力の歴史も古く、多数の専門家が派遣されて関係資料も多数にのぼるが(巻末に収集資料のリストがある)、今回の調査でさらに基礎的な資料が得られ、飼料の生産と給与の実態を明らかにし、関係機関との意見交換などが行なわれ、それらの内容が報告書としてまとめられた。
すなわち飼料問題の前提としての農業および畜産事情、畜産振興施策などについて述べ、濃厚(配合)飼料と粗飼料の需給状況を紹介する。配合飼料の生産は年々増加し、年間1,000万トン(2000年)にも達し、飼料原料の輸入も150万トンに達している。政策的に配合飼料の価格が設定されているためか、市販飼料の品質には問題が多く(飼料検査の必要性を提起)、農業副生物などの低利用資源のさらなる活用も必要としている。一方、粗飼料はほとんどを野草類に頼っており、さらなる生産のためには牧草の利用や飼料木、稲わらの活用が必要とされた。
関連施設として、飼料分析所(飼料検査所)の施設と活動状況、民間飼料配合工場の業務の実態、酪農家の実情などについて現地調査が行なわれ、それらを総合して、「飼料生産および未利用資源の活用についての課題と方策」について専門的な立場から検討を加え、さらに「飼料問題を含む酪農全般」について問題提起を行なった。それらは調査結果の要約と所感にまとめられているが、特に(1)ナショナルレベルの乳牛の飼養標準、飼料の成分表の策定と普及、(2)飼料分析の普遍化(分析実施拠点の拡大)、(3)農家段階での牛の栄養要求量にマッチした飼料給与技術の確立と普及などの各分野を取り上げて、わが国の技術協力の可能性を示唆している。 |
1.調査の概要(要約と所感)
2.インドネシア概要(農業と畜産、畜産物の生産と需給、濃厚飼料・粗飼料の需給など)
3.地域レベルの精査(関係機関、西ジャワ州と中部ジャワ州の牧場と農家調査)
4.飼料生産にかかる課題と方策の検討
5.酪農についての問題提起
6.わが国の技術協力の可能性
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