公益社団法人
畜産技術協会



ガンマ線照射による「刺さないミツバチ」の作出
農林水産省畜産試験場 育種部 みつばち研究室  天野 和宏[H10/ 他動物/育種・遺伝]


はじめに
 ミツバチは有用な家畜ではあるが、刺傷性が強いため、農家を含め、一般の人が飼養することは難しい。
 今回、ガンマ線照射による突然変異体利用により、人に危害やその恐怖感を与えることのない「刺さないミツバチ」を育成することができた(写真1,5)。ミツバチは巣の創設時から大きなコロニーを形成するため、効率よく維持・管理されやすい花粉媒介性昆虫(ポリネータ)でもある。しかし、ミツバチは強い刺傷性をもつため、一般農家によるコロニーの飼養はあまり行われていない。そこで、人にやさしい(gentle)あるいは全く刺さないミツバチの開発が強く望まれている。

内 容
1. 女王に、20〜50Gy(グレイ:線量)のガンマ線を照射すると、その子孫に「刺さないミツバチ」が現れる(出現率:0.5〜1.0%)。この「刺さない」形質は遺伝し、これらの個体から「刺さないミツバチ」の系統樹立が可能となる。
2. 個体の発生時期(蛹化が起こる産卵後9日目)に30Gyのガンマ線を照射すると、ほとんどが「刺さないミツバチ」となる(出現率:97%)。この方法で、人工的に「刺さないミツバチ」のコロニーがつくられる。このコロニーはポリネータとして利用可能。
3. 第2の方法で、「刺さない形質」をもった女王が育成できる(写真6)。
4.「刺さないミツバチ」の刺針は、それを構成している2種類の針(1本の針状体と2本の針管)が分散しており、「刺す」機能を喪失している。さらに、毒液を注入するための弁も分散しているため毒液を注入することもできない(図1、2)。

留意点
 「刺さないミツバチ」のコロニーは、働きバチだけの人工的なコロニーであり、その利用期間は概ね1ヶ月ほどと想定できる。
 「刺さないミツバチ」の系統の樹立には、第1の手法と交配・選抜作業を併用することにより達成可能となる。また、第3の「刺さない形質」をもった女王の遺伝性が明らかとなれば、系統樹立効率が高まるものと期待される。

写真1
写真2
写真1 ガンマ線照射を受ける
ミツバチコロニー
写真2 「刺さないミツバチ」の
コロニー

写真3
写真3 手の上の「刺さないミツバチ」

写真4
写真4 通常のミツバチ(左)と「刺さないミツバチ」(右)の刺針

写真5
写真5 通常のミツバチ(左)と「刺さないミツバチ」(右)の尾端外観

写真6
写真6 通常の女王(左)と「刺さない形質」をもった女王(右)の刺針

図1
図2
図1 ミツバチの解剖図(上)と
注射器に対応させた刺針構造図
(刺針システムは多くの部品によって構成されている)
図2 「刺さないミツバチ」の刺針
(刺針システムが構成されていない)


PAGE TOP

(C) Japan Livestock Technology Association 2005. All Rights Reserved. CLOSE