公益社団法人
畜産技術協会



めん羊での飼料給与の注意点 −反芻胃のしくみ−
家畜改良センター 十勝牧場  河野 博英[H13/他動物/生理]


はじめに
 舎飼で飼育されているめん羊では、摂取する栄養のほぼ100%が飼育者に委ねられている。このため、めん羊の健康状態は飼料の内容や与え方によって左右される。飼料給与で失敗をしないためには、めん羊の反芻動物としての消化のしくみと特徴を理解しておく必要がある。

内 容
1.消化のしくみ:めん羊や牛などの反芻動物の胃は第1胃から第4胃までの4室に分かれている(図1)。第1胃と第2胃を合わせて反芻胃という。第1胃は発酵タンク、第2胃は吐き戻しのためのポンプとして機能している。採食された飼料は第1胃で撹拌・混合されるとともに微生物によって発酵分解され、第2胃の収縮によって再び口腔に戻されて噛み返し(反芻)が行われる。これを数回繰り返して充分に細かくされた飼料は第3胃を経て第4胃に送られ、単胃動物と同じように酵素による消化が行われる。第1胃内での微生物による飼料の発酵が反芻動物の消化の特徴である。このことによって、単胃動物では消化できないセルロース性飼料(粗飼料)が有効利用できる。
2.飼料給与の注意点:めん羊の消化機能を高めるためには第1胃の酸性化を抑制し、セルロースの消化に適した環境を維持することが重要である。第1胃のpHは採食や反芻の際に分泌される唾液によって調節されるが、めん羊が粗飼料だけを採食している場合は第1胃のpHは6.8〜7.0で安定している。しかし、濃厚飼料を採食すると咀嚼も反芻も短時間であり、唾液の分泌量が少ないため、第1胃は酸性に傾いてしまい、セルロースの分解ができなくなる。このため、肥育子羊や授乳前期の雌羊のように濃厚飼料を多く給与する時は、少量ずつ数回に分けて給与することが望ましい。濃厚飼料の日量は同じでも、1回で与えるよりも2回の方が第1胃の酸性化が緩和でき、短時間でpHが正常な状態に戻るため、セルロースの消化に大きな影響を与えない(図2)。また、濃厚飼料の給与量を急に増やすと、第1胃内では乳酸を生産する微生物が優勢となり、養分の吸収が困難となる。第1胃が酸性化の状態にあっても、給与した濃厚飼料を消化吸収するためには乳酸をプロピオン酸に分解する微生物の存在が不可欠であり、このような微生物を増殖させるためには、濃厚飼料を1週間程度かけて徐々に増量する必要がある。

問合先:h0kouno@nlbc.go.jp


(第1胃は発酵タンクとして機能しており、
微生物の働きによって飼料を発酵分解する )


図1 反芻動物の胃

 
(1)濃厚飼料を1回で給与した場合 (2)濃厚飼料を2回に分けて給与した場合
図2 第1胃内のpH変化


PAGE TOP

(C) Japan Livestock Technology Association 2005. All Rights Reserved. CLOSE